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……最初は幻聴かと思ったがディーゼルのエンジン音が聞こえてきた。ガラガラとやかましくて、すぐに分かる。僕に比べて視力が格段に優れている人間らしく、はるか遠方から僕を発見したようだ。
自分にとって敵じゃないことを祈りつつ、近付いてくる連中をよく見ると、使い込まれたトラックは明らかに民間用だった。荷台の幌の中には羊を積んでいる。狭いキャビンの中には女子供がぎゅうぎゅうに座っていて僕は思わず苦笑した。
「あんた、こんな所で何しているんだい!」
運転していた男が僕に呼びかけてきた。
「見ての通り遭難して困っているんだ。どうか後ろに乗せてくれ!」
僕はありったけの力をふりしぼり、大声でその男に懇願した。
「見たこともない格好だな、あんたどこからやって来たんだ?」
東洋系と思われる男は顎の髭をなでながら、僕をじろじろと観察している。
僕があまりに困っているのを見かねたのか、隣に座っている奥さんらしい人が男に耳うちした。すると男は眉をしかめた後しばらく考え込み、子供達を見回した。窓から身を乗り出して僕を見ていた二人はニコッと笑った。すると男は大きな声で叫んだ。
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