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そして本当にあっという間もなく扉を開いた。
ドアの角でごつんと頭を打ったキマイラが
目の色を変えて吠えたてる。
「ああ、ごめんごめん」
九条さんは僕を背中に庇うようにして
部屋から一歩歩み出ると
「そんなに無駄吠えしちゃダメだ。君は血統のいい御曹司だろ?」
明らかに犬相手ではない目線で言い放つ。
貴公子の先制攻撃に
さすがに目を丸くしたのは征司の方だった。
「座れ」
それでも悠然と
赤い首輪を引いて怪物を黙らせると。
「家に侵入した不審者がいるようだ」
視線は九条さんを通り越し僕の上に注がれる。
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