episode251 天宮和樹はまた振り出しに戻る

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「ご冗談……セザンヌの絵よりあなたのキスに価値があるって?」 憎まれ口を叩いてみるけれど。 「少なくともリンゴにもナプキンにも口はないだろ?」 柔らかいキスは心地よかった。 「うん……」 「指もない」 「当たり前でしょ」 頬から首筋にかけて撫で下ろす椎名さんの指からは 不思議と青いリンゴのような匂いがした。 「で?まだ静物画の方がいいわけ?僕の可愛い子は——」 10個のりんごに見つめられながら しばし彼に身を任せていると——。 「だから気分なんだって——」 ここのところの怒涛のような出来事が 悪夢みたいに頭の中を駆け巡る。 「少なくともりんごもナプキンも愛について僕を悩ませないから」
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