episode251 天宮和樹はまた振り出しに戻る

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「そう、僕は待っていたんだ――嵐が通り過ぎてゆくのを待つように、ただ待ってた」 自嘲気なニュアンスで美しい唇を微かに歪める。 と九条さんは僕の手を引いて黄色い薔薇の花瓶の前に立った。 「どうしようもないだろう?自分じゃどうすることもできないんだ」 今の今——力尽きた薔薇のまだ瑞々しい花弁を 白く繊細な指先が拾う。 「僕を怒ってもいいよ。感情のままに」 「感情のままか」 僕の口から飛び出した稚拙な言葉に 九条さんはほんの少し逡巡し微笑んだ。 「前にそんなことがあったね——僕が感情のまま君に怒りをぶつけ、君を閉じ込めて、隷属の印にこれと同じ黄色い薔薇の花弁を食べさせた。覚えてる?」 彼の指先で捻られた花弁から途端に——。 「もちろん……もちろん覚えてるよ」 淫靡な記憶を呼び起こす 甘い香りが漂ってくる。
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