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僕のため息に三度唇を重ねると
「それで?どこに雲隠れしてたんだ」
割と真剣な声で椎名さんが尋ねた。
「あの後から——」
「あの後?」
「忘れたか?生涯またとないピンチだと言う君を真夜中に遠くの湖畔まで迎えに行ったのは僕だ」
なのに——椎名さんは恨みたらしく前置きして。
「こっちに戻った途端、一言の挨拶もなく僕の前からも姿を消してさ」
僕の頬を小さくつねった。
「あれから君を捜して——僕のところに2人ともいらっしゃった。そりゃ大変だったんだぞ」
その状況がどんなものだったか——まあ簡単に想像はつく。
「そりゃ申し訳なかったけど……」
「そう思うなら教えろよ。あれから1週間だ。まさかずっとリンゴとナプキンを見てたわけじゃないだろ?」
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