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◆
あれから、10年。
わたしは両親と相談して大学に進学した。
お金は奨学金をとり、がんばってバイトして返済した。
そして、わたしはまた母校に戻ってきた。
ーー今度は、教員として、英語科準備室のドアを開ける。
カズさんの座っていた椅子に座る。
多分、きっと気のせいだろうけど。どこかカズさんの温もりを感じたような気がした。
「カズさん。わたし、がんばるから」
あの日。カズさんの机にあった翻訳ノートは、今ではわたしのお守り。
大学入試も、教員採用試験も。このノートがあったからがんばってこられた。
ーーあなたを、夏に例えてみようか。
ーー君の永遠の夏を色あせたりはさせない、
もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ。
ーーこの詩は生き、君にいのちを与えつづける。
「カズさん。好きでした」
多分。これからも、ずっと。
<終>
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