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第一部より続き
あぜ道から元の道路に戻り、道路を横切ってお向かいの鈴木さんの家に向かう。
ご遺族の方には敷地に入る許可を頂いている。
鈴木さん達は庭で亡くなっているのが発見された。なので真っ直ぐに庭へと向かう。
道路から見ても分かるが、塀はなく家の周りは立派な垣根を巡らせている。濃い緑色でツヤのある葉っぱ、そしてほんの少しだけ肉厚があるこれは椿だ。
庭先に行くとたくさんの木々や草花がバランス良く植えられていて、あまりの美しさに息を呑んだ。
庭に面した縁側からこの庭を見たらさぞかし素敵なことだろう。
そう思っていると庭の木々の辺りにはお爺さんが二人、縁側の辺りにはお婆さんが二人いた。
全員が泣いている。御老人の涙に胸が痛みながらも私は話しかけた。
「すみません、お話を聞かせていただいてよろしいでしょうか?」
全員が私を見た。そして一人のお爺さんが話し始めた。
『私は元庭師の高橋と言います。私たち夫婦と鈴木さん夫婦は昔から仲が良くてね。あの日、庭木の剪定を頼まれた私は妻と一緒にここに来たんだ……。
現役は退いたが、庭師をやっていた頃の愛用のハサミを持ってね……。それがどうしてこんなことに……』
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