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高橋さんはまた泣き崩れてしまった。そして鈴木さんが語り始める。
『高橋さん、あれは事故だよ。仕方のないことだ。高橋さんが悔やむことではないよ。ただ……不憫なのは妻たちだ……』
鈴木さんも涙を流す。すると今度はお婆さんが話し始めた。
『鈴木の妻でございます……うぅっ……』
『高橋の妻です……私は自業自得です……』
二人のご婦人も泣き続ける。お年寄りの涙には弱いが聞かなくてはいけない……。
「……どなたか、教えてくださいませんか?」
すると鈴木さんの奥さんが顔をあげた。
『恐らく私が一番後に息を引き取ったのでしょう……全てを見ておりました……
あの日高橋さん達に来ていただき、夫達は庭の手入れを、私達はこの縁側でいつものようにその光景を眺めておりました……
私達はいつもお茶やお菓子を楽しみながら見ていたんですよ……あの日は知人から送られてきたお煎餅と、高橋さんが持ってきてくださった大福を食べながらでした……』
なんて素敵な老後ライフだろう。それが突然失われたのだ……。
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