雨つぶのオープンウオーター

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「あー……国体目指すんだってさ。いま正式種目になったろ? もともと長距離の選手だし、コーチに勧められたみたいだ。こないだグァムの海で大会だったらしい」  和泉は、ひょえーなんて声をあげた。ショートの髪がゆれて雫が飛ぶ。 「うちトコは短距離とせいぜい中距離かな……樋口みたいにロングに強い選手は、いないなあ」  同じ水泳部、といってもふだんはそれぞれのスイミングクラブで練習している。高校の水泳部なんてそんな感じ。学校自前のプールで専属のコーチがいて、とかいうのは私立の強豪校くらいなものだ。俺たち公立組は小さい時からお世話になってるクラブで、ずっと同じコーチに指導を受けている。  お互い小学生になる前から水泳をずっと続けて、チビの頃から大会で何回も顔を合わせてきた。別々のクラブ、でも同じ市内だから、なんとなく顔見知りだった。それでも春先に高校の入学式で顔を合わせたときは、どきんってした。ジャージ以外の服装なんて初めて見たから。チェックのスカート、ブレザーに赤いリボン、なんだかすごく女子だった。おかげでその晩は、なかなか眠れなかった。 「あたしの『夏』は終わっちゃったけどさ、樋口はブロック大会頑張ってよね」  おう、といちおう返事をする。  こんなとき、水泳って競技が恨めしい。  野球部だったら、「俺が甲子園に連れていってやる」とか言えるだろ?     
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