私が死んだ理由

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その日、とある産婦人科系の病院の分娩室で悲鳴が上がった。 分娩台の上で、悲鳴を上げて泣き叫ぶ妊婦。 その近くで、お産を見守っていた妊婦の両親は、あまりの光景に絶句していた。 何故ならば、今しがた産まれた新しい命が可愛い娘の子宮を掴んで産まれてきたのだから………。 小さな手に、子宮を掴んで産まれてきた赤子は、子宮をひしと握りしめながら、元気な産声を上げた。 元気な女の子ですよーと、冷静に話す医師に今にも倒れそうな顔色をした妊婦の母親が、泣き叫ぶ妊婦の声を背に叫ぶような声でこう言った。 あの子を殺して頂戴! 可愛い私の子供の大切な物を奪った、あの子を殺して頂戴! そういい放つ母親に、未だに泣く赤子をあやす看護婦も医師も冷たい目で、母親と父親、それから未だに泣き叫び続ける妊婦を見ながら、医師はこう言った。 あの赤ん坊は、明らかに貴方の娘さんより子供ですから……… だから、何の罪にも問われませんよ そうハッキリと告げた医師に、妊婦はその日一番の大声で泣き叫び、医師はそんな妊婦や未だに青ざめ固まる父親と母親に目もくれず、手形の付いた潰れた子宮を袋の中へ放りいれた。 そして、そんな医師の言葉を聞いた赤ん坊は……… キャラキャラと、嬉しそうな笑い声をあげたのだった………。 おしまい。
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