日本の神さま

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日本の神さま

初詣で近所の神社で買ったお守り袋の中から、神さまが出てきた。 袋の中で何かごそごそしているので、まさか虫でも入っているのではあるまいなと思って開けて振ってみたら出てきた。 背丈は3センチくらい、髪はぼさぼさでよれよれのボロをまとい、何が入っているのか膨れ上がったズタ袋をしょっている。 一見してホームレスそのまんまの姿だが、ただサイズは一寸法師だ。 なぜ神さまなのだとわかったのか、わからない。ただ、その姿を見て神さまだと直感した。 何を願ってお守り袋を買ったのか、思い出そうとしたが思い出せない。いつもの習慣で買っただけらしい。 神さまは俺の手のひらの上で寝ころんだままもそもそしているだけでろくに動かない。 どんなご利益があるのだろう。考えていても仕方ないので、私は神さまをまたお守り袋に戻して、車のバックミラーにつけた。 そうしたら、帰り道で目の前でお守りがぶらぶら揺れて目がくらんで川に落ちた。 助かったからご利益があったのか、何の役にも立たなかったのか、それとも悪いことを起こすのが役割だったのかわからない。いずれにせよ、お守り袋の中身は空っぽになっていた。
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