第3話

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 場所はコーヒーショップだった。カラオケとかもう面倒くさい、とさくらが言ったのを、光は覚えていてくれたらしい。  そう、もうカラオケなんて面倒くさい。2時間とかいう縛りも嫌だ。最初は帰りたい時に帰れる、こういう簡単な店で会う方がよっぽど気が楽なのだ。だって相手がどういう人間なのか、分からないのだから。 「あ、裕貴(ゆうき)、おまたせー。こっち、さくらだよ。さくら、彼が裕貴。あたしの彼氏」  コーヒーショップの二階に上がると、階段のすぐ前の席に男の子が二人座っていた。今どき珍しい、白シャツに黒いスラックス姿。冬が来れば学ランを着るこの学校は、偏差値の高い公立高校。 「おー光。さくらちゃん、はじめましてっ。光がいつもお世話になってます、なんつって。噂通りの美少女だなあ。『松川の奇跡』だっけ?」  笑いながら言うのは八重歯がかわいらしい男の子だ。さくらは驚きながら会釈をする。光の彼氏は、大学生の隆一(りゅういち)だった筈だ……つい、先週まで。  いつの間に別の子になったんだろう。でも、光の好きそうな男の子。屈託ない笑顔で、周囲の空気を明るくするような子。  その裕貴がとなりを指さす。となりに座るのは、とても体格のいい陽に焼けた整った顔の……男。 「で、これが佐伯遼(さえきりょう)。バスケ部のキャプテンしてる。さくらちゃんの事ずっと前から見てたって。あんまししゃべんないけど、いー奴なんだ」  その男はさくらに向かって小さく微笑む。とても綺麗な顔。その口が、ゆっくりと開く。 「はじめまして。越智さくらさん、ずっと見ていたんだ。君は見える人だから。俺は……仲間だよ」  さくらは何も言えなくなって、黙ったままで席に座る。  ぱっと聞いただけでは意味の分からないその言葉。でもさくらにはよく分かる。  この目の前の素敵な男。彼はさくらのとなりの蜜柑に目を合わせて。 「可愛いね」  ……なんて言って、にっこりと笑う。
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