第2話

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「さくら、昼ごはん食べといで。佐々木さん、何かご用が……?」 「いえ、お客様に商店街をご案内していただけなんです。今はお団子を食べながらお茶なさっていて。だからなんとなく、宗一郎さんのお顔をと……」 「もー見ましたね! はいもー見ました! お兄ちゃん、ごはん行ってきます! 女将さん、美味しいお店に連れてって下さい!」  さくらは百合子の腕をがっちりと掴む。ああ、と声を上げる百合子を連れて、商店街の出口までずんずんと進む。 「……でっ? それで、どーしたのっ! がつんと言ってやった訳? まさか、暴力に及んだんじゃ……!」  明けて月曜日。さくらは学校にいる。ホームルーム前の朝の教室。前の席に座ってこっちにかぶりついているのは、親友の河野光(こうのひかり)である。さくらは苦笑する。 「まさか。私にだって理性ってものがあるわよ。後で告げ口されたんじゃかなわないし。だからまあ、にっこり笑って握手して」 「あ、握手? なんで? なんて言って握手するの?」 「協定を結んだのよ。『東京の彼女を忘れさせましょう』と、『もうすぐ帰ってくる牡丹って式神に注意しましょう』。敵は少ない方がいいに決まってるでしょ? 特にお兄ちゃん、今牡丹に傾いてるから。命張られて責任感じて。それが式神の仕事なのに、なんかいたく感銘を受けちゃって危ないのよねえ」  ……ほおおおお、と光が感嘆の声をあげる。小学生の時からの付き合いの光は、さくらの持つ不思議な力を知っている。さくらが松川を護る拝み屋として働いている事も、宗一郎や翼という、仲間がいる事も。 「そ、その牡丹って人、美人なのよね? 遊女って事は、そっちも上手って事よね? その人に、さくらのおにーちゃんは庇われて責任感じて。……それもう、ほぼ落ちたも同じじゃない? 東京の彼女以前の問題で、さくらはお化けに完敗っていう……」
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