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『よう、吉村沙々。よくも今まで散々俺らを雑に扱ってくれたな!』
(は!? 何っ、あんた誰っ)
『誰でもいいだろ、お前は俺らに話しかけられるの嫌いみたいだしー? もう話すこともないだろうしな!』
(あんた、今、私の中にいる奴!?)
『そう。ちょーっと身体を乗っ取らせてもらったぜ。あんたに酷い扱い受けて恨んでる霊達を代表して、俺がお前の身体を乗っ取った。お前に自分の最期を見せてやる。これが俺達の仕返しだ! せいぜい今までの自分の言動を反省するんだな!』
(ちょっと! 最期って何! ちょっとー!)
いきなり頭の中で直接話しかけてきた男に意味の分からないことを言われて、さらに焦っていると急に胸が苦しくなる。
「先生! 心肺停止です!」
「心臓マッサージだ!」
「沙々っ!」
(はあーーっ!? おいっ、ちょっと! 何で私の心臓止まってんだよ!)
苦しい中で聞こえてくる医者の声や親の声に反論していると、すーっと目線が高くなる。下を見れば目を開けたまま親や医者達に囲まれながら何度も何度も心臓マッサージをされてる私の姿。それを客観的に眺めている私。どうやら私は、さっきの男に無理矢理自分の身体を追い出されて魂だけの状態になっているらしい。
「午前八時十五分。ご臨終です。原因不明でして、お力になれず、申し訳ありません」
「そんなっ、沙々! 沙々ーーっ!」
『嘘だろーー!? おい、何勝手に死んでんだよあんた!』
泣き崩れる両親に抱きしめられる私に向かって、いや、正確には私の中にいる男に向かってそう叫ぶも、両親の腕の中の私は相も変わらず目を最大まで開きっぱなしでいるままで、中の奴は何の反応もしなかった。
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