優しい夕立に明けの空

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 添えられた手に力が入るのを感じて身を固めた。もうこっちを見て欲しかった。その眼で全部、曝け出した私の顔を。身体を。全部あげたかった。けど優は優しくて。私の身体を見ない様に腰に片手を添えて抱き締められる。  その状態で優は眼を開けた。至近距離に重なる視線が物理的な熱を帯びてそうで、私は何だか泣きそうになる。駄目だ、まだ耐えて、もう少しだから。 「……俺は、空が好きだ」 「――――――――――」  息が詰まる。 「わ、私も…………好き」 「今ので大好きになった」 「ふぇあ!?や、あの」 「その慌てっぷりで愛しているに更に変わった」 「あ、あ、あい!!?」  頭が花畑でカーニバルが始まる。天使がラッパを吹き始める。優はそのまま私のおでこにキスをして、頭が熱に浮かされていくのを感じる。こんなに浮かれ易い女だっただろうかと自分を疑うが、優に感じてはこういう人間だった事を思い出す。  ヤバい、溶かされる。トロトロにされてしまう。じ、自我を保つんだ私。腰に添えられた手から、合わさった胸から響く力強い鼓動が、壮絶な疼きが身体を駆け巡るが耐えろ。 「空……」 「は、はぃ……」  駄目だ、既に溶けていた。借りて来た猫よりも弱々しくなってしまう。うぅ……今度は私の目が閉じる番になってしまった。  くそ、くそ……結局私の負けじゃないか……すっごい幸せだ…………  いつの間にか、あれだけ五月蝿かった夕立は過ぎ去り、空に掛かる虹が見えていた。紅い夕日に当たった2人の顔は、その赤さを隠して笑顔だけを咲かせてくれた事だけは覚えている。
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