高校二年生、初夏

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 あまりの衝撃に愕然とする俺の肩を、第一発見者の女生徒、高橋雅(たかはし みやび)が乱暴に揺すった。 「ちょっとベニ、あやかっときなさいよ」  それには俺もムッとして、態とらしく顎先を上げた。 「俺だって、春先はあんなもんだっただろ!」  だが得意気に今年の新入生に呼び出された事を自慢した俺に、雅は分かりやすい憐れみの視線を向けている。 「それ、自虐?」 「ベニは一ヶ月限定新入生キラーだもんね!」  続けと雅の親友、近藤菜々(こんどうなな)が杭を打ち、俺はなす術もなくうな垂れた。  別に紺程ではないが、俺だって呼び出される事はある。外見だけは群を抜いているとは良く言われるし、自信はあるんだ。しかしどうも、俺は性格に難があるらしい。陰険とか、そう言う事じゃなくて……率直に言えばバカが隠せないらしい。  その致命的なバカが滲み出てしまい、俺ブームは新入生がそれに気付くまでの一ヶ月持てばいい方だ。もう高校二年にもなって、漸く受け入れられるようになったが、雅にガツンとそれを指摘された時は、かなりヘコんだもんだった。いや、今もヘコむけど。雅も小学生の時からの幼馴染で、腐れ縁。俺をよく知っているだけに、その破壊力は凄まじかった。  俺があえなく撃沈している傍で、雅は人を傷つけた自覚もなく、何事も無かったかのように会話を続けた。 「紺さん、何で彼女作らないんだろ」 「案外もういるんじゃない?」 「でもベニが知らないって事はいないっしょ」  そう、あれだけモテる紺だが、未だ浮いた話がない。一度だけ、中学生の時に押し切られて付き合った子はいたが、それはそれは嫉妬と妬みで獄絵図だった為に直ぐ別れる事となってしまった。  そもそも恋愛の話しを全くしない訳でもないし、聞けば答えてくれるんだろうけど、どちらかと言うと兄弟のように育ったせいか、何となく流れ的にそっちに向かないのだ。
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