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その様子を黙って見つめていた上条は、また椅子の背もたれに身を委ねた。ふわりと風が二人を撫でて過ぎて行く。小さな小鳥だろうか、可愛らしい声が遠くから聞こえた。
「・・・ごめん、ね。わかったよ」
お茶を一口飲み終えた上条は、そう言って頷いた。美月はホッとした反面、遼佑の寂しそうな笑顔に罪悪感すら覚えて弁解する。
「すみません。あ、でもお支払いしていただく金額に見合った、何かをさせてください」
遼佑は口を尖らせて「う~ん」と唸ってから背伸びをする。本当に何も考えてなかったことに、美月は正直驚いていた。
「な~にしてもらおうかな」
やっと寂しい表情は消え、穏やかな遼佑に戻る。美月は遼佑があの日、絵のモデルと言ったことを思い出した。
「絵のモデルにって仰ってたから・・・デッサン?とかですかね?」
「それなら、脱いでもらわないといけないね」
上条はそう言って、ニヤリと妖しげに微笑む。
「それは・・・」
美月が動揺すると、上条はさも可笑しげに笑い出した。
「俺は人物画は描かないと言ったろ?」
「そうでした・・・」
ホッとする美月を、上条は優しげな眼で見つめた。
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