第二章 すずらん return of happiness(再び幸せが訪れる)

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 上条が独り言のように呟いた。サキさんとはお手伝いさんのことだろう。手馴れた様子を見て、美月は近くにあったカウンターチェアに腰掛けた。 「かえって、お邪魔になりそうですね」  観念して座った美月に、上条は胸の辺りをポンポンと叩いて微笑むとフライパンを取り出した。  かき玉スープに中華サラダ、メインのホイコーローまで、上条はあっという間に作ってしまった。フライパンで炒める手際のよさも然ることながら、何から何まで無駄がない。それに盛り付けも美しい。白と緑のマーブルのお皿にはホイコーローがいい香りの湯気を立てている。かき玉スープは楕円形の白いミニボールに注がれ、中華サラダは透明なお皿にこんもりと盛られきゅうりと春雨の清涼感が食欲をそそった。 「どこで食べようか? ダイニングでいいかな?」  盛られたお皿を持って、隣のダイニングに向かった。八畳ほどのダイニングには、六人掛けの椅子と大きなテーブルが置いてあり、食器棚があった。入口を入ってすぐの右手にはアンティークな腰ほどの高さのローボードがあり、ステレオデッキが置いてある。上条の背丈ほどある食器棚から取り出した皿を、無造作にテーブルに置いていく。美月もそれは手伝った。 「今日は少し風があるから、今度、外で食べようね」     
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