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上条が小皿を並べながら言った。アトリエ傍のウッドデッキは、本当に上条のお気に入りなんだなと思いながら、美月は頷いた。
上条はダイニングにあるステレオデッキからゆったりとした音楽を流す。外国の女性のボーカリストが甘い声で歌い出した。
「中華だけどジャズでね」
あまり洋楽は聴いたことがないという美月にも、心地よくその声が入ってきた。上条は食器棚に背を向けた席に美月に座るように促すと、自分もテーブルの角越しの隣に座る。美月が手を出すより早く、上条が取り皿に取り分けた。
「どうかな、気に入ってくれるといいけど。食べてみて」
そう上条に促されて、美月はサラダから頂いた。
「美味しいです! 甘さとのバランスがいいです!」
「お世辞でも嬉しいよ。たくさん食べてね」
「お世辞じゃないですよ。ほんとに」
上条は終始ニコニコしながら食事を続けた。美月も何をしに来たのだったか忘れそうなほど、リラックスし始めていた。
「時間は何時までならいいの?」
食事を終えると、上条が少し寂しそうに尋ねた。美月は、口に入れたお茶を飲み込む。
「遅くても、7時には家に着きたいです」
「わかった。じゃあ、ここを6時くらいには出なきゃならないね」
美月は上条に聞いて、仕事をまた探すことにした。
「食事を終えたら、いつもは?」
「昼寝。一緒にしようか?」
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