第二章 すずらん return of happiness(再び幸せが訪れる)

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 また妖しげに笑うと、上条はアトリエに美月を誘った。アトリエには大きなソファーがあり、美月はそこに腰掛けるように言われると、上条も少し離れて隣に座った。 「う~ん・・・」  上条がそのまま横になり美月の膝に頭を乗せる。美月が驚いて固まっていると上条が 「いや?」  と聞いてきた。  眼にかかる髪の間から、薄い茶色の瞳が覗く。少し充血した眼が、妖艶にすら感じる。 「昨日、嬉しくてなかなか眠れなかったんだ」  ~こんな顔からそんな発言は卑怯よ。イヤなんて言える訳がない~  美月が固まっている間に、上条は寝息を立て始めた。長い睫毛に前髪が風で触る。美月はそっと髪を撫でた。上条は定期的な呼吸を繰り返している。風向きが変わって、上条からシプレー系の香りがほんのりとした。男性的な、でも優しい香り。 美月は強い匂いが得意ではないので、滉一は香水などつけない。整髪料もデオドラントスプレーもあまり匂いの強くない物をチョイスして使ってくれている。でも滉一が選ぶ香りとは違った大人な匂いがすると美月は思った。上条の身体から出る大人の男の匂いを感じている気がして、美月はそっとその匂いを吸い込んだ。  午後の穏やかで静かな時間が、ゆらりゆらりと過ぎていく。鳥の鳴く声と木々の囁き、風がまた少し強まってきたようだ。     
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