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美月は上条の身体を案じて、そっと膝枕を外そうとする。すると暖かな手が、美月の太ももを押さえた。
「上条さん、風邪引いちゃう」
美月は起こすのもかわいそうだと思ったが、声をかけた。
「上条、さん、は嫌だな」
上条は上を向きなおした。先ほどより赤い目をして、美月を見上げる。
「じゃあ、何て呼んだら?」
上条はニヤッと笑って
「りょすけ」
と言った。
「りょすけ・・・さん」
さすがに、呼び捨てには出来ないと美月は思った。でも上条は不満そうにまた
「りょすけ」
と言い直した。
「りょすけ・・・ですね?」
仕方なく美月が呼び捨てにすると、遼佑はにんまりした。付き合いたてのカップルのようで、なんだか恥ずかしい。
「もう少しだけこうしてて」
遼佑は猫のように、膝にスリスリして甘えた。滉一も美月の膝枕が好きだった。耳掃除してと言って膝枕すると、必ず決まって寝てしまう。
「安心するんだ」
滉一がそう言っていたなと、美月は思い出していた。しかし、しばらくその体制でいた美月は、足の痺れに耐えられなくなった。
「あの・・・かみ、りょすけ、足が痛いです」
「あぁ、ごめん、ごめん」
遼佑はすぐに起き上がって、寝癖のついた頭を撫でた。
「お手洗いに行ってきます」
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