第二章 すずらん return of happiness(再び幸せが訪れる)

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美月は姿勢や向きを直そうとしたが、やはり遼佑は無反応だった。  そしてまた美月は、遼佑の視線だけを感じた。左のヒップを経て、わき腹を上がる。少し背中を通って肩に登る。見られている左側だけが熱い。味わったことのない緊張だが、美月には心地がよく感じられた。 「ありがとう。もういいよ。っと時間だよ」  遼佑はスケッチブックを仕舞うと、寂しそうに微笑んだ。 「あ、はい。じゃあ、また来週」  美月がそういうと、遼佑の表情がパァッと明るくなった。 「じゃあ、また来週」  そう言う遼佑は、子供のように無邪気に微笑んでいる。美月はこれで少しは役に立つことができたのかもしれないと、ホッとした気持ちになっていた。 「はい。宜しくお願いします」  そう言いながら、美月はコートや荷物を持つ。遼佑が勝手口まで、見送りに来てくれた。 「来週は何したいか、お互いに考えておこう」  遼佑はそう言って、爽やかな笑顔で手を上げた。  勝手口を出ると迎えの車が待機していた。美月は頬の緩みが戻らないまま、車に乗り込むと短く挨拶して下を向いた。 「お疲れ様でした。どうでしたか?」  美月の表情に、瀬木はすぐに気が付いたようだった。   「デッサンのお手伝いを・・・」  その言葉に、助手席にいた瀬木が振り向いた。     
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