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「ピンポーン」
美月の気持ちとは正反対に、明るい音で玄関のインターフォンが鳴った。
「ただいま」
滉一がいつも通りに帰宅した。
「おかえり」
玄関に出迎えるといつものように滉一がキスをする。美月は小さな罪悪感から首に手を廻さずに、滉一の腕を掴んだ。
「どうだった? 今日は疲れたんじゃない?」
滉一は気づいていないようで、ニコニコと美月の頭を撫でた。
「うん。初めてだからちょっと疲れた」
滉一が美月のほっぺを、両手で挟んで覗き込んだ。
「なんか熱いよ。熱でもあるんじゃない?」
美月は頬を挟まれながらも、目線を下げて逃げた。
「慣れない所だったから、緊張して知恵熱でも出たかな?」
滉一は手を離すと美月の額を触って「う~ん?」と唸る。美月は滉一に罪悪感をまた感じ始めていた。
「・・・大丈夫だよ」
そう言いながら、滉一の手から逃げるようにキッチンに向かった。
「無理しなくていんだよ」
滉一が後ろから付いてきて、美月の頭を撫でた。
「ありがとう」
着替えに滉一が部屋に入ると、美月は心からため息をついた。
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