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美月がそっと振り返って、遼佑に問う。遼佑は鉛筆で何かを書きながら「あぁ」と頷いた。見られていなかったんだと美月はほっとした。遼佑は画家であり、裸婦のデッサンなど何度もしたことがあるだろう。私は絵のお手伝いに来たのだったと、美月は思い直した。美月はシャツを脱いで後ろに落とし、横座りに座り直した。
「シャツとカーディガンを前にかけておくといいよ」
遼佑が言った。美月が従うと、腰の端まで遼佑の目に触れていることに戸惑った。
「ありがとう。寒くはない?」
遼佑はそんなことは全く気になっていないようで、美月を気遣ってくれた。
「大丈夫です。座り方はこうでいいですか?」
その問いに、遼佑は答えることはなかった。先日もそうだったが、遼佑はデッサンを始めると黙々と鉛筆を走らせて、周りの音は一切聞こえていないようだった。カリカリと鉛筆が削れていく音と、遼佑のたまに聞こえる咳払いだけが聞こえている。先ほど気持ちを切り替えたおかげか、とにかくデッサンの邪魔をしないようになるべく動かないことに美月は集中していた。しかし、しばらくして美月はお尻の辺りがムズムズと感じた。お尻をちょっと横に振る。
「お尻フリフリはかわいいけど、どうしたの?」
遼佑がすぐにそう言ってきた。美月はソファーの素材が革であるために、汗ばんでいることに気が付いた。
「あの、何か敷いてもいいですか?」
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