第三章 カラー feminine modesty(乙女のしとやかさ)

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 そう言うと遼佑が「そっか」と言って立ち上がり、書斎の椅子にあった薄いクッションを持って近づいてくる。美月は前をカーディガンで押さえる手に、力が入った。 「かわいいお尻を上げて」  遼佑がすぐ後ろに立ってこう言った。美月が背もたれに片手を付いて体を持ち上げると、遼佑がしゃがんでお尻の下にクッションを入れてくれた。背中に遼佑の息がさわさわとかかる。緊張して、美月は振り返ることもできなかった。そして今度は、遼佑が息を吸う。緊張と興奮で美月の皮膚があわ立った。遼佑は何も言わず、ただそれを何度か繰り返した。遼佑の吐息がかかる度に、美月はカーディガンを握りしめた。 「寒いのを我慢してくれてたんだね。ごめんね。もう止めるよ」  遼佑は、美月の皮膚があわ立ったことを勘違いしているようだった。 「違うんです!あの、息が・・・くすぐったくて」  そう言って美月が遼佑を振り返ると、間近に遼佑の顔があった。遼佑は 「感じやすいんだね」  そう言ってニヤリと笑った。わかっていて遼佑は美月にそう言ったのだろう。美月はとてつもなく恥ずかしく、益々顔が熱くなり、俯いてしまった。遼佑はそれをどう思ったのか、美月の頭をポンポンと優しく叩くと、立ち上がって向かい側のソファーに座る。また鉛筆の音が聞こえ出し、遼佑が何も言わない時間に戻った。       
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