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横山はオレではなく、このいかにもやる気のなさそうなだるっとした雰囲気の男が好きなんだ。と。
その日はショックであまり覚えていない。
次の日から、観察の対象に仁山も追加された。
どこか一つでも悪いところがあって、彼女に
「こんなヤツやめて。オレを好きになって!」
と漫画のように言えたらいいなと思っていたからだ。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。
仁山は悪いヤツじゃなかった。
確かに、いつもどことなくだるそうな雰囲気を醸し出してはいるが、頼まれたことややらなければならないことをしっかりやるタイプの人間だった。
それに仁山はオレと同じタイプの人間だった。
観察してわかったのだが、割と横山が仁山に話しかけることが多い。
「仁山くん。このプリント持ってる?」
「あるけど。」
「コピーさせてもらえるかな?」
「いいけど。」
「ありがとう!お礼・・・するね」
と、どことなく気恥ずかしそうにそれでも、次の機会へのチャンスにと横山がいじらしく提案するところをよく見た。
それに対して、仁山は
「別にいい。」
「でも・・・」
「・・・じゃ、ジュース」
「へ?」
「ジュース一本な」
と落として上げる作戦を遂行する。
だいたいこの後、ジュースをおごられた仁山は横山に「ジュースのお礼な」と別の何かを頼んだりする。
こうやった、お互いが『お礼というなと関わり作戦』と敢行しているのを横で見てきた。
それで、仁山も横山のことが好きなんだな。とわかった。
口に出して、直接的に聞いてはいない。
違うかもしれないし、そうかもしれない。
違うかった場合はそれこそラッキーだが、仁山にオレが横山のことが好きだということがバレてしまう。
それに、そうだった場合はオレの精神的ショックがすごい。
絶対に立ち直れそうにない。
じゃあ、告白してしまえばいいじゃないかと思うかもしれない。
残念ながら、負ける勝負に挑むほどオレは強くはない。
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