死の境界線、いくつもの死。ただあれがどうしても死なない。

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 私はOOOO年O月O日のO時OO分に死んだ。 夜中の残業から急いで帰宅する途中、遮断機を無視して鉄路を思いっきり横切った。 列車にはねられて即死した。 けれど、私はそこで死んだのではない。 支離破滅になった身体の中で生きていた32.7兆の細胞は1日後に死んだ。 私がいつもつけていた腕時計は1年後に故障して帰らぬ物となった。 私の魂はその場で鉄道を越え、また三次元を超えて1億年生き続けた。 でも、私の思い出は消えることがなかった。  私、三次元の地球という星で生きたこの意識の主体は、OOOO年O月O日のO時OO分に事故の理由で死亡した。 しかし、何十兆もの生き物からなる超個体である私、時の流れの一部としての私、異次元で異なる組成を持つ私はみんな生き残った。そしてそれぞれまた違う理由で死んでいった。 私の思い出だけが、わけもなく、この宇宙が壊滅しても、天国と地獄が逆さまになっても、死なない。
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