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その日から、モノクロに見えていた世界が急に色付いた気がした。
「あ、来た!!」
「えっと、こういう時は……お待たせって言えばいいのかな」
孤児院を何度も何度も抜け出し、彼女に会いに行った。
彼女は、会う度に知らなかった言葉を遊びを沢山、沢山、教えてくれた。
そうして、別れる時には決まっていつも、
「また明日!!」
と、向日葵の様な笑顔で手を振ってくれるのだ。
其の姿を見るたびに、心が浮き立つ様な感じがして、翌日彼女に聞くと、これが【嬉しい】という感情らしい。
人間に、また一歩近付いた気がした。
___
そんな関係が、何年も続いた。
その時になると、俺は色々な事を知っていた。
虹というものも見たし、海というものにも入った。
やっと、人間になれた気がした。
「明日から、高校生二年生だね」
「そう、だね」
俺も彼女も、もう高校生になって、すっかり大人に近付いていた。
公園で会う約束は、今も破られていない。
そんな明くる日。
彼女は泣きながら、酷く取り乱した様子で公園にやって来ていた。
「ど、どうしたの!?」
そう聞きたかったが、彼女の見たことの無い様子にどうすれば分からず、聞くにも聞けなかった。
ただ、ただ、彼女の背中をさすることしか出来ない自分には苛立ちを覚える。
暫くすると、彼女は泣き腫らした顔を此方に向け、
「死にたい」と呟いた。
俺は、普通に驚いた。
彼女は何時も明るくて、向日葵の様だったから。
何でも、見知らぬ男にレイプされたらしい。
俺からすれば「それがどうした」と、なってしまうのだが、一般的な感性からすると、それは許されないことらしい。
「………相手は?」
その言葉を聞くと同時に、心にドロドロとした黒い感情が生まれる。腹立たしいような、憎々しいような、言いようのない感情。
その次の瞬間。
気が付けば、俺は彼女を抱き締めていた。
「…………え……?」
自分でも意味がわからなかった。
彼女自身も理解出来ていないのか、目を見開いている。
ああ、これは何。
知らない、俺はこんな感情知らない。
こんなの彼女も、孤児院の人でさえ、教えてくれなかった。
分からない。
分からない。
だけれど、自分が今すべき行動だけはしっかりと理解していた。
___初めて、彼女を助けたいと思った。
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