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「モニタリング?」
「はい。私たちは茶道部ですので、その茶道を支えているお茶という日本の伝統文化が、現代社会の商品にどれほど受け継がれているのかというモニタリングです。」
雅はあくまでも部活動を押し通す。
「それならば袋菓子は何かな?」
少々意地悪な質問を教頭はぶつけてみる。
「お菓子は茶道にとって重要なアイテムです。どのような現代のお菓子がお茶に合うのか探るのも茶道部の活動だと思います。」
雅もここまでくると、もう一歩も引かないと言わんばかりに視線を逸らさない。
あまりの強情さに、教頭も言葉を失う。
「まあまあ、教頭先生。茶道部が今後も活動を続けるなら、それもまた結構。」
「しかし校長先生・・。」
「いやいや、茶道部だとこの子らは言っているわけですから、少し見守りましょう。きっと美味しいお茶がまた飲めるでしょう。週末の理事会がまた楽しみです。」
校長が言わんとすることにピンとくる。
「ああ、なるほど、そうですね。初代茶道部長の理事長がいらっしゃるわけですから、みっともない点前の披露などはできませんね。日頃の練習の成果を存分に発揮してもらいましょうか。大丈夫ですよね、茶道部新部長。」
「もちろんです!」
売り言葉に買い言葉。まったく意味がわからなかったが、勢いで返事をしてしまった雅であった。
校長先生と教頭先生が立ち去ったあと、詩音が雅に、
「どしたの、いきなりスイッチ入っちゃって。」
と言った。
詩音の知っている雅は、先生に反論する自我の強いタイプではなく、大勢の中に埋もれてるおとなしい女の子だった。
じっと考えている雅。
「なんか、なんかね、終わらせたらいけないかなあって。」
「終わらせたら?」
「うん。北条先輩は、こんなにあっさり茶道部をなくして欲しくなかったんじゃないかなあって。そう思った。」
雅の今までと違った一面をみた詩音。
「そっか。わかった。私も協力するよ。」
「ありがと。頼りにしてる。」
「ところでさ、校長先生の言った週末の理事会って何のこと?」
改めて詩音が聞く。
「お茶を出せばいいんじゃないの?」
といつものお気軽娘に戻って雅が言う。
「えっ?なんか違うっぽいんだけど。」
と、隣で聞いてた幸。
「とりあえず、4日後でしょ?準備とかいらないのかなあ。」
「ちょっと偵察に行ってくるわ。」
パタパタと春香が部室を飛び出して行った。
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