俺の場合は後者。内心は――。

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「何だいその顔は? 俺達を無下にしてどうなるか分かっているのかねチミは?」 「あの、邪魔なんですけど」 「え、あ、敬語?」  ああ、大体分かったわ。こいつ、鏡の真似して遊んでるだけだわ。  後ろの方で崩れ落ちた鏡が「親友に……敬語を……」なんて言って項垂れているのを確認し、俺はもう一度前を向く。するとどうだ、全く同じことを口にして崩れ落ちている沖田君がいるでは無いか。これは、本当に関わるだけ時間の無駄な奴だ。  内心、今の俺は劇画調に驚きの顔を張り付けている、なんてアホな事を考えつつ、俺は沖田の屍を跨いで教室を後にした。後でこの数分ぶんの労働賃金払ってもらわないとな。  やっとの思いで科学準室に到着した俺は、数回ノックを鳴らし扉を開いた。  実のところ、科学準備室が科学室近くにあることは分かっているが実際何処にあるのかは分かっていなかったりする。だから取り敢えずこっちに来たというわけだ。 「失礼しますー」  特に誰かが居る訳では無いのだが、雰囲気が俺に挨拶をしろと訴えかけている。そんな気がした。  そんな事を考えつつ科学室に足を踏み入れる。  因みに、科学は一年と二年のみ選択可能の教科であり、その二学年全ての授業を受け持っているのが渚先生だったりする。他の一般教科担当に比べて時間に余裕があるとか言ってたな。  スムーズに開いた扉の先は幾つもの席が準備されており、それらが奥にある黒板に向けて整頓されている。そして、その黒板の左側に窓の無い白塗りの扉があるのだが――。  そこでピロリンとスマホに通知が来た。先生からだ。 『準備室は奥の扉たぞ』  また誤字ですか。そう思いつつ、自然と頬が緩んでしまうのは仕方がない事だと思う。  スマホを再度ポケットへ閉まった俺は、準備室――白い扉をもう一度ノックした。  すると、途端に扉の中が騒がしくなり何かが落ちたり転がったりする音が聞こえてくる。なんか怪しいな……。
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