俺の場合は後者。内心は――。

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 しかし、だとしてもこのままここであたふたしているのも問題だ。仮にも俺と先生は生徒と教師。こんな変な現場を誰かしらに目撃されては要らぬ噂が立ってしまい兼ねない。それも、それが噂では無く事実となれば――。  俺は慌てて先生を抱き抱え、そのまま科学準備室へと足を踏み入れた。  それから数分、(ようや)く復活した先生と共に俺は昼食を取っていた。  弁当は先生の御手製。意外にも料理が得意らしく、中に詰まっている料理は全て手作りだった。 「ど、どうだ?」  先程、あまりの展開に何故か泣き出してしまった先生の目元は少し赤い。そして瞳が潤んでいる。更に更に、そこからの上目遣いで心配そうに感想を聞いてくる。  ……男たるもの、分かるよな? 俺の心はどんちゃん騒ぎだぜ?  しかし、極力先生から嫌われたくない俺は極めて平静を保ちつつ、こ慣れた様子で微笑みで答える。 「うん、美味しいですよ」 「そ、そうか……よかった」  もうね、抱きしめていいですか? いいですよね? 俺達、恋び――っといかんいかん。俺の中の悪魔が、先生のあまりの可愛さに顔を出してしまった。  ふるふると頭を振った俺は、先生の用意してくれたお茶で喉を潤す。あ、やべ。ただのお茶なのに滅茶苦茶美味しく感じるわ。  そんな俺の様子を終始楽しそうに見つめる先生に、もう普段の凛々しさは無い。言うなれば、牙を抜かれたライオンのようだ。ただの大きな猫みたいな。  甘々空間。今が将にその時なのだろう。そんなリア充的思考を頭の中でグルグルと回していると、不意に疑問が浮上した。  ――先生はいつから俺の事が好きなんだ?  何となく、触れてはいけない内容のような気がする。が、一度気になると止まらないのが人間の性というもの。  俺は興味本位とばかりに、先生へそのまま質問を投げた。
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