俺の場合は後者。内心は――。

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「うおいっ! どーしたんだよ」  思わず変な声を出してしまった。  俺は二人にちょっと電話と短く返し、そそくさと二人から隠れられる場所まで移動する。あいつ等に知られたらまずい事では無いのだが、何となく恥ずかしい……。  柱の裏に移動した俺は、もう一度スマホに表示される名前を確認して電話に出た。 「も、もしもし……」 『おっ、やっと出たな。急にすまない』  晶さんだ。実は、告白した次の日の晩から時間があれば電話する、という小さなルールを作っていたのだ。これは、教師と生徒である俺達が普通に街中をデート出来ない代わりに、という晶さんの強い希望で決められたもの。  しかし、今日は友達と朝から出かけると――言ってねーや。 「ああ、す、すみません。ちょっとありましてね……」  連絡忘れという重大なミスに今更気が付き、内心焦りまくっている俺は極力冷静に返答を返した。  そういえば、晶さんから二人の時は敬語禁止令を頂いたのだが、実際の所未だに敬語が抜けない。やはり、学校でも顔を合わせているといった理由で切り替えが難しい。  普段より凝り固まった俺の敬語に、電話越しに難色を見せる晶さんは、少しばかり棘の含んだ口調で続ける。 『……約束は守ってもらいたいものだが、まあいい。しかし、直ぐに約束を破ってしまう春一には何かペナルティを与えなければいかんな』  あー……なんかこの感じは嫌な予感がするな。 「ぐ、具体的には?」  電話越しに唸り出す晶さん。その声がとても可愛らしく、相手が年上だという事を忘れてしまいそうになる。  そんな可愛い晶さんを堪能(たんのう)していると、何かを閃いたらしく『ぬわっ!』と驚きにも近い声を上げた。 『私は閃いてしまったぞ……名案名案』  先程とは打って変わり、楽し気な声だ。
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