俺の場合は後者。内心は――。

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「んん? 名案です――名案? 何させる気だ?」 『フフフッ、これが君にとってペナルティになるかは分からんが……今日の夜、私の内に来てご飯を作りなさい。これは命令だ』 「……へ? ご、ご飯?」  斜め上のペナルティに変な声が出る。って最近変な声しか出してない気がするな。  それよか、ご飯か。俺は至って普通の男子高校生だし、そんな味の良い料理なんて作れないんだけどな……多分、作れて野菜炒めとか焼きそばとか簡単なやつ。  うーんと頭を悩ませていると、視界の端で沖田が俺に何か合図を送っているのを確認した。  何々……んあー、あれは多分先に行くぞって感じだな。俺の為に付き合ってくれているのに待たせるのは悪いな。  取り敢えず時間とかを簡単に決めて早めに済ませよう、と決めた俺は再度電話に意識を向ける。 「わ、分かった。あまり期待しないでもらえると助かるけど……」 『うん、全然構わないよ。私は君の手料理が――ってこれは普通君が言う言葉だな』  電話越しに笑い出す晶さん。何はともあれ、機嫌が直ってくれてよかった。何で怒っていたかは、後であった時にでも聞けばいいだろう。多分敬語だったのが八割だと思うけど。 「それじゃ晶さん、申し訳ないんだけど今沖田たちと遊んでてさ、待たせちゃってるから時間だけ決めていい?」  出来るだけ「迷惑じゃないよ」というのを言外に伝えつつ言葉を選んだが、それでも申し訳なさを感じたようで晶さんが焦り出した。 『わわ! す、すまんな……今日休みだったから少し浮かれていたのかもしれない。それじゃあ、十六時頃に私の家に来てもらいたい。少し遅いかもしれないが、それから二人で隣町まで買い物に行こう』 「分かった! じゃあ、また後程」 『ああ――――だ、大好きだぞ!』  物凄い勢いで電話が切られた。それに少し驚いたのだが、それ以上に晶さんが最後に言い逃げした言葉が脳内で反響する。  ――大好きだぞ!  その言葉に、(しばら)(もだ)えてしまったせいで周りの目が痛かったのは、晶さんが百パーセント悪いと言わせて頂きたい。
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