俺の場合は後者。内心は――。

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 スマホのロックを解除し、今流行りのSNSアプリ〝LIEN〟を起動させる。因みに、このアプリはフランス発祥で意味は〝繋がり〟だったり〝絆〟だったりするとか。ま、いっか。 何々……。 『科学準備室にて待つびっくり』 『! 間違えた』 『かおもじ』  思わず口を押える。  ビックリマークの変換ミスはまだわかるとしてもさ、顔文字の変換ミスで〝かおもじ〟は――可愛すぎるでしょ! もしかしてあの人、こういうのに慣れてなかったりするのかな? 勝手に研究者っぽいから電子機器の扱いには慣れていると思ってたんだけどな。  先生の予想外過ぎる弱点? の可愛らしさに、ニヤケ顔が止まらない俺はそそくさと隠れるように教室を後にした――かったのだが、思わぬ刺客(しきゃく)が俺の行先を(はば)んだ。  言わずもがな、あの二人なのだが。 「鳴海さんよォ、俺の言いたい事、分かるよな? な?」  鏡が「全くよぉ」と言いたげな表情で俺の肩へと腕を回した。 「全くよぉ」  あ、言いやがったよこいつ。  うざったい笑みを浮かべた鏡は、先程と同じように血走った目で俺を至近距離から見つめる。もうこいつが変態であることは覆しようのない事実だからいいとして、それでも気持ち悪いから回した腕を退けてもらいたい。  そんな事を割とマジで思いつつ、俺は無表情でスマホをポケットにしまう。 「あ、いえ。何の事かわからないので退いて貰ってもいいですか」 「え、あ、敬語?」  基本的に、ウザ絡みをしてきた鏡の取り扱いは〝敬語〟の一択で大丈夫だ。頭の弱いこいつでも、あからさまな態度の変化には対応可能だからな。  鏡の腕を振り払った俺は、何事も無かったかのように扉を開けようと――。 「鳴海! 俺達を放って一人何処に行こうとしているのかなぁぁああ?」  したがそれも阻止された。次の刺客は貴様か! 沖田ァ!  そろそろ本当に教室を出たい俺は、心底うんざりした顔を作り沖田へ向ける。もしもここで更に鏡が加勢してきてしまうと、本当に捌くのが面倒なのだ。
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