1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして長い長い戦いが続いた。
激しい戦いは二人の肉体を大きく変化させていた。
おばちゃんには面影など全く残っていない。
それはまるで神話に語り継がれてきた大いなる存在。聖母ともマリアとも呼ばれるべき、その慈愛に満ち溢れた両手には赤子を抱いている。
その姿。正に神。
対する旦那は、面影こそ残ってはいるが、三面の顔を持ち、背中からは巨大な漆黒の翼が生えている。下半身は数十メートルはあるだろうか。蛇の形を成している。手は六本あり、それぞれ形状の異なる武器を携えている。
その姿。正に悪魔。
おばちゃんも旦那も既に体力は無く、戦いは最終局面を迎えようとしていた。
決めるしかない。
おばちゃんも旦那もそう考えていた。
皮肉な事にすれ違いを続けていた夫婦の想いは、最後に一致したのだ。
「くらえぃ!確定申告ーっ!!」
「なんの!扶養者控除ーっ!!」
「ばかめ!自営業のわしには効かんわーっ!」
「ちっ。この甲斐性なしがーっ!」
「なにぃ!誰のお陰でいままでーっ!」
長かった戦いが、今終わろうとしていた。
ぶくぶくぶく。
私が死んだ理由。
そんな妄想をしていたら、ついうとうとしてお風呂で寝てしまい溺れてしまったから。
最初のコメントを投稿しよう!