雨の日の傘屋

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けれど、青年は500円玉をじっと見つめた後、首を横に振った。 「え、どうして。500円でしょ?」 青年は私の財布を覗き込むと、100円を指差してから片手をパッと開いた。 「100円で5枚欲しいって事?」 うんうんと、青年は細かく頷いた。 変わった人。 そう思いながらも、私は100円玉で5枚を青年に手渡した。 「何色がいい?」 というので、私は赤と答えた。 青年は籠から赤い番傘を手に取り、私に差し出した。 番傘を広げてみると、竹の骨に赤く染まった和紙が貼られ、とても綺麗だった。 そのまま販売所の外に出ると、番傘の上で雨粒が踊る音が聞こえた。
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