1人が本棚に入れています
本棚に追加
けれど、青年は500円玉をじっと見つめた後、首を横に振った。
「え、どうして。500円でしょ?」
青年は私の財布を覗き込むと、100円を指差してから片手をパッと開いた。
「100円で5枚欲しいって事?」
うんうんと、青年は細かく頷いた。
変わった人。
そう思いながらも、私は100円玉で5枚を青年に手渡した。
「何色がいい?」
というので、私は赤と答えた。
青年は籠から赤い番傘を手に取り、私に差し出した。
番傘を広げてみると、竹の骨に赤く染まった和紙が貼られ、とても綺麗だった。
そのまま販売所の外に出ると、番傘の上で雨粒が踊る音が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!