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「ありがとう。おかげで」
青年にお礼を言おうとしたが、青年は私の声が聞こえていないのか、目の前の棚に並べられた野菜を真剣な眼差しで選んでいた。
そして、さつまいもを一袋取り、私から受け取った100円玉を集金箱に一枚入れた。
さつまいもを見る青年の顔は、まるでお菓子を買った子供のように嬉しそうだった。
私はとっさにリュックから相棒を取り出すと、パシャリと一枚写真を撮った。
そして、私はそのまま帰ろうとしたが、帰り道がわからない事を思い出して、やっぱり青年に話しかけた。
すると、青年はセツさんと名前を出しただけで、家までの道のりを教えてくれた。
私は青年に礼を言うと、雨の中を赤い番傘を差してセツさんの家に向かって歩き出した。
雨音と腰元の鈴の音を聞きながら。
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