雨の日の傘屋

2/16
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
彷徨い、約束の時間から随分と遅れてたどり着いたお宅は立派な木造の平屋建てで、庭もあり、目の前には畑が広がっていた。 その家に住むのは、70歳を過ぎた秀雄さんとセツさんの二人。 子供達は出稼ぎにでているという。 玄関のドアを開くと、セツさんが笑顔で迎えてくれた。 居間には囲炉裏があって天井から鍋が吊るされる。 その横では、秀雄さんがお酒を飲んでいて、私が挨拶をすると上機嫌に返してくれた。 部屋は広くて綺麗な和室で、夕食もご馳走になった。 料理の食材は、ほとんどこの村で採れたものだという。 村の近くにある川では、川魚がたくさん釣れる。 囲炉裏で焼いた魚を、私は初めて食べた。 どれも、とても美味しかった。 食事中、私は山について尋ねた。 秀雄さんはよく山に山菜を採りに行くらしく、山に詳しかった。 山は人の手がほとんど入っておらず、道は悪いが山菜も木の実も豊富。 動物や鳥も多く生息しているという。 それを聞いて、私は胸が高鳴った。 そして、村出身の先輩の恥ずかしい過去で盛り上がり、いつの間にか夜が更けた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!