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晴れたある日の朝、一面の青い空の帆布を白く厚く塗る雲が夏の訪れを感じさせる日。普段なら静かでおとなしい私たちの家は、ドタドタと騒がしい音をたて、窓や扉からは舞い上がったホコリが飛び出していた。
「さて、これで終わりかしらね」
長く、美しい白銀の髪をまとめ、山積みにされた古書を外に出す。長い間、日の当たらない暗い部屋にしまわれていたその書物は、固い口を風によって開かれ、パタパタと音をたてながらめくられていく。
「先生、いい加減に片付けてください」
いつもなら硬く閉ざされている窓を開いて先生を探す。先生は部屋の中で椅子の背に寄りかかり、また別の古びた書物を読み込んでいた。
「もう、片付いた。終わりにしよう」
「何も変わってないじゃないですか! 先生」
「下手に片付けるより、慣れてる状態の方が良いこともあるよ」
手にもつ書物をパタンと閉ざし、窓の外にいる私にほほ笑みかける。その顔は初めてあったあの日と同じ……
「……だまされませんよ」
「ありゃ?」
「先生はいつもそう。これに関しては笑ってごまかしても駄目です」
「ハハハ……ダメかぁ」
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