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先生の笑いにつられて、私も笑った。大きな声で、吹き抜ける風の音がかき消されるほどの声で。
音のないその風に飛ばされた紙切れが窓を抜け、先生の元に着く。
「……」
「先生? どうしましたか?」
先生の笑い声は消え、じっと見ている。わずかに口を動かしているが、その声は私には聞こえない。
「ねぇ……レイラ」
「はい、なんですか」
重くなった口を開き、私に聞いてきた。
「……君の夢はなんだい?」
「夢? ですか?」
「うん、夢。目標でも良いよ」
「そうですね……」
私の夢。それは……
「……いつか、先生と共に並べる程の、一流の魔法使いになること。です」
「そうか、それなら僕も頑張らないとね」
「先生?」
「ごめんね。変なこと聞いて。……さあ、続けようか」
それだけ言って、先生は部屋の奥へと行った。扉を閉めるその背中はいつもと変わりない姿であったが、どこか哀しみか怒りを感じさせた。
「今日は、風が強いわね」
まとめられた髪をなびかせる風は、空にかかる厚い雲を散らし、いつもと変わらない空を見せる。
先生と私、これまでも、これからも何も変わらない日常は永遠と続くと思った。
日に干された古書は、その固い裏表紙をパタンと音をたてて閉ざされた。
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