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第2章 出逢い
そんな ある日 私は いつもの様に 客のいない時間を見計らい レンタル店を訪れた。
棚の位置が移動し 新しい作品が沢山入荷していた。一つ一つ 品定めをする事に 夢中になり 私は 入り口のドアから 客が入ってきた事に気がつかなかった。借りる物を決め 財布を取り出すと 小銭の部分が 閉まっておらず 床に小銭を ばら撒いてしまった。
慌てて拾い集める私の目に 男性の革靴が飛び込んできた。ふと 見上げると 背の高い 細身の男性だった とっさに 「すいません! すぐ 出ますから!」
恥ずかしさで 身体が熱くなり 顔が赤くなるのが 鏡を見なくても分かった。
慌てて 暖簾の外へ出ようとした瞬間 ガシッと 腕を掴まれる。 ハッと 立ち止まり 振り返ると
「あの…100円 お忘れです」と 爽やかな笑顔で 渡されたが、まだ 私の腕を掴んだままだ。
「ありがとうございます!」逃げ帰ろうとする私に 男性が 続けて 声をかけてくる。
「お好きなんですか? こういうの」もう一度 男性の顔を見ると 静かに笑みを浮かべている。
「いえ、あの… 別に…」
その場から 逃げたいばかりで 腕を振り解こうとするが、いっこうに 離さない。
「よく 利用されていますよね?」
え? なぜ 知ってるの…
「ぼくも、よく利用するんですが、よかったら そこの喫茶店で お話しませんか?」
紳士的な姿勢に、いや 男性に声をかけてもらえるなんてずいぶんと 無かったので、つい嬉しくなって お茶をする事にした。一番奥の窓側の席へ座り 少し緊張している私に
「アイスコーヒーでいいですか?」
「あ…はい。」
アイスコーヒーがテーブルに運ばれ
男性が、名刺を取り出し 自己紹介を始める。
代表取締役 という肩書きが 飛び込んでくる。
「お若いのに 社長さんなんですね?」
「小さな会社ですよ。親が引退したので 自動的に 勝手に社長になった様なものです。」と 笑う。
そのまま 少しの沈黙…切り出したのは、男性だった
「その…レンタルDVDは、よく利用されるんですか?」私 小さく頷く。
「ああいう 刺激 必要ですもんね!」
反応に困っていると 続けて
「経験…してみたいですか?」
カーッと顔が熱くなる。
「ぼくで よければ、お相手します。よかったら
連絡してきてください。」
アイスコーヒーを 飲み干すと 立ち上がり
「連絡 待っています。」と 囁き 支払いを済ませ足早に去っていってしまった。
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