1月、そして2月

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「悪かったって思ってるよ。先生に無理言って、抱いてもらったこと……だって、ああでも言わなきゃ先生に抱いてもらえないと思ったんだもん。ああ言っとけば、先生には責任ないでしょ? 本当に『一夜限りのいい思い出』にしたいって思ってたのよ……たとえ万が一のことが起きてもね」  彼女らしからぬ浅はかな考えだ、と五嶋は苦笑した。  しかしながら、彼女の浅慮を大っぴらに笑えるほど五嶋とて深慮があったわけではない。だからこそ「万が一」が起きたのだし、今こうやって対峙することになっている。 「本当にあれで終わらせるつもりだった。『いい思い出』だけあれば、後は一人でも生きていけると思った……でも、でもね」  シャツをつかむ彼女の手が、細かく震えていた。 「先生……優しいんだもん。むさいし口は悪いし意地も悪いけど……優しいんだもん。わかってるよ……優しいのは『先生』だからって。『先生』だからこそ、私のこと心配して優しくしてくれるんだって。わかってるよ……」  しのぶは顔を上げ、五嶋の目をまっすぐに見つめた。  あの夜と同じだ。彼女の瞳に映る自分の姿が揺れている。 「でも、好きなの。先生に迷惑かかるって、こんなことバレたら先生学校にいられなくなるかもしれないって……わかってるけど、好きなの。ずっとずっと一緒にいたいの!」
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