1月、そして2月

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 すれ違いざまに残した言葉に、しのぶも、そして諏訪と春賀も驚いて眼を丸くする。  あまりに無責任で慈悲のない言葉──ともすればそう聞こえるかもしれない。しかしこれは、五嶋なりの計算があっての言葉だ。  そしてしのぶは、その計算通りに動いてくれた。  そのまま教室を出て行こうとする五嶋の背中に、彼女の震える声がぶつけられる。 「何よ……またその手?」  足を止め振り返ると、しのぶは唇を噛み締め、五嶋を睨むように見つめていた。 「そうやって突き放して、知らないフリして、私に喋らせようって魂胆なんでしょ。同じ手は二度も通用しないの。言わなくたってわかってるんでしょ? 私の、本当の気持ち……」 「さあな」  そっけなく突き放す素振りでさえ嘘だ。本当は痛いほどわかっている。 「そういうところがズルイっていうの。私にばっかり喋らせて、先生は絶対に自分の気持ち話さないくせに」 「聞きたかったら、お前から先に話せよ」 「もう……頭くる」  そう言いながらしのぶは怒りもせず、静かに歩み寄って五嶋の胸に額をつけた。  降りしきる雪の中で抱きしめたあの日を思い出す。
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