二ツ星恋愛恋慕

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誰もいない自宅に帰り、スーパーで買った材料で食事を作って、特別面白い訳でもないTVを見ながら「いただきます」と「ごちそうさま」を言う。これが俺が望んだ日常。これ以上、望むことなど許されない。 俺はあの時、死んでいたかも知れないんだから……水溜まりに落ちた俺を助けてくれなければ……どうなっていたか…… そう、彼が俺を助けてくれた命の恩人。彼が生きてる世界で暮らしてみたいと願った。ただそれだけで良かった。昨日までは…… 授業以外で言葉を交わすことなどないだろうと思っていたのに……想定外だ……ダメだこれ以上、近付いては……彼に近付いてはいけない。 翌日も雨が降っていた。梅雨なのだから仕方ないが…… 「先生?」 「君は……また傘忘れたのかい?」 「……紫陽花」 「え……?」 「紫陽花って雨だと凄く綺麗に見えるよね」 彼がそう言うとそう見えてしまう。ここに見える全てが、彼がいるだけで鮮明に見えてくる。神経が研ぎ澄まされる…… 「……そうだね。きっと紫陽花も喜んでいるよ。君に褒められて」 「……あはっはは」 突然笑い出した彼を見た。俺は何をおかしなことを言ったのか首を傾げていると余計笑われた。
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