125人が本棚に入れています
本棚に追加
朝田ハルキは、目眩と耳鳴りを同時に体感したような気分だった。酷く喉が渇く。
がさがさになった唇を開いた。
「イエス」
一瞬の間を置いて、背後からまた声が聞こえた。
「本当だな。本当に拳銃が欲しいんだな」
両手の先が震えている。朝田ハルキはそれを体感できるぐらいに緊迫しながら、慎重に頷いた。まっすぐ前を見たままに。
すぐに背後の声の主が、朝田ハルキに並び立った。
男は、「ついて来い」と手短に言うと、すぐに歩き出した。ハイボールの酔いが回りつつある朝田ハルキが追い付くのが困難なほどの速さだった。
男は繁華街の裏路地を右へ左へ曲がりながら歩き続けた。
男の後ろに着いて歩く朝田ハルキからは、男の顔がまるで分からない。ただ、男がサングラスで顔を隠しているのは、背後からでも何とはなしに分かった。
最初のコメントを投稿しよう!