強襲

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蒸気機関車を作ったおかげで文明は遥かに進み、その蒸気機関という機構を様々な物に流用したことで人類の生活基準は数年で爆発的豊かになったという。 魔鉱石という資源は今のところ尽きる予定はない。 だがそれは魔王が健在であればの話であり、考えられないが魔王がいなくなった場合、資源が枯渇し資源を取り合う戦争が起こる。 さらに蒸気機関は大気を汚し、魔王の放つ魔素とは別に環境汚染されていた。 その原因を作ってしまったラタナスは、後世に悪影響を及ぼすと考え、蒸気機関の代わりになる物を考えていたところを殺害された。 「何が起きたのかはよく分かってないんだけど、あっしが使ってた工房が丸ごと壊されたんだ」 気が付いた時には致命傷を負い動けなくなっていたが、痛みは感じずただ燃えるように体が熱かったのをラタナスは覚えている。 霞ゆく視界には、魔法を使えないラタナスでも分かるほど圧倒的な魔人が瓦礫の上に立っていた。 周りに人だかりが出来る前にその魔人は消えるように立ち去り、ラタナスもそこで目を閉じた。 それがラタナスの見た最後の景色。 あまりにも呆気なく突然の事に恐怖を感じる間もなく息絶えた。 最初、ラタナスはアルビドゥスから出てきた化物に殺された、と言った。 ほぼ間違いなくアルビドゥスを攻めてきた化物、もとい産まれた何か、だろう。 「自分で言うのも恥ずかしいけれど、たぶんあっしが死んだことは歴史的な事件だと思う。でもなんであっしが殺されたのか……」 大して強くもないのに、とラタナスは理由が分からないと首を捻るが、ルフ達はその理由に検討がつく。 「いや……こんなんアタチでもラタナス殺すのだ」 「え!?なんで!?あっし悪いことは何も……」 「だって……なあ……?」 デルフィがルフに振ると、気まずそうに首を縦に振る。 「うん……ラタナスはたぶん文明を一気に進め過ぎたんだと思う。魔王は自分に対抗するような戦力や武装が整うのを危惧して元根を絶ったんだと思うけど」 それまでは大人しかった魔王が急にアルビドゥスに攻めてきた理由の1つと言えなくもない。 「じゃあ平穏を再び戦乱に導いたのはあっし……?」 「いや、そこまでとは言わないけども……」 ただ、魔王が文明を進め過ぎたという理由でラタナスを殺したのならば、ルフが死亡して100年経った今、どれ程発展しているのが想像がつかない。 そもそも蒸気機関車だって夢物語だった。 ルフ達の時代でも移動や運搬のほとんどは人力か騎馬がせいぜいだ。 それを思うと少しアルビドゥスの外がどうなっているのか楽しみでもある。
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