か弱くて、小さい

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人族の中でも、人間というやつは、耳も目も悪い代わりに知恵は働く。 だがその知恵も広く浅くで他の人族である知恵の回る耳人や立派な体躯と毛皮を持つ目人、細工作りに長けた手人に総合では勝てるが個別では敵わない。 人族の中でもふらふらと真ん中辺りを行き来する器用貧乏。 それが人間だ。 そんな、かつての魔族の王からしてみればゴミ虫同然の種族として生まれてしまった元魔族王龍にして魔族最強の魔王、現人族人間にして無力なユーカラは、今日も元気に疲弊し、絶望していた。 「ユーカラ、ご飯だよ」 生ぬるく汗の臭いのする、ぐにぐにと気持ちの悪い乳首が目の前につき出され、更に口内に押し込まれる。 汗と乳の臭いに吐き気を覚え、それを押し潰すように母乳を吸う。 早く終われ。早く終われ。早く終われ!!! 産まれた直後、ユーカラは授乳の拒絶を繰り返し、そのたびに母乳の噴射を食らい、脂でべとつく液体にまみれた。 日に何十回も不快な液体にまみれるか、それを飲み下すか。 その2択を迫られ、結局ユーカラは折れた。 そうしてやっとのことで母の乳首に吸い付くようになっても、次にユーカラを待っていたのはその母乳の酷い味だった。 不気味にほの甘く、ぬるく、ねっとりとしたのど越しは、否応なしに吐き気を催させた。 何度も嘔吐し、殺せとばかりに泣き叫んだ。 それでも、父と母はユーカラの命を諦めなかった。 母は辛抱強くユーカラに乳を含ませた。 父は何度でもユーカラをあやした。 十月十日。いや、それ以上。長く待ち望み、やっと産まれた我が子を生かす為に。 母乳を吸うのを止めると、女はユーカラを抱え直しその背をぽんぽんと叩く。 ユーカラがげっぷをすると、安心したように微笑む。 げっぷと同時に、その服を吐瀉物で汚したら、少し慌てる。 そして、いつだって同じことを言う。 「愛してるよ、ユーカラ。私達の可愛いお姫様」
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