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あの屈辱の尻叩き以来、ユーカラの涙腺はゆるゆるのくたくたになってしまった。
昔の夢に泣き、今の現実に泣く。
「ユーカラ。可愛い子。愛してるよ」
そして、この女の、あまりにも柔く甘い声に泣いた。
「ああ、ああ。お前は本当に泣き虫ね。泣いてばかりいると、ムーズラーフに連れていかれちゃうよ」
泣きぐずるユーカラを女は優しく揺すり、歌を歌う。
ーーおやすみ、私の赤ちゃん。何からも守られて。
可愛い子。安らかにお眠りなさい。
私の胸のなかーー
その歌をやめろ。
やめてくれ。
思い出したくもないものを思い出すから。
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