花だけが見ている

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 達哉は髪型なんて、正直いうとどうでもよかった。どちらかといえば、オタ芸をする方が嫌だったが、皆とやってしまったら意外と楽しかったな、と思った。  さあ、帰ろ、と一歩さっちゃんの方に足を踏み出してなんとなく昔、いつも手をつないでいた時のように手を出すと、ピョンっとさっちゃんが達哉の手を取った。  ドキッ。  心臓が飛び出た。  達哉はさっちゃんの手をとったまま、動けなくなってしまった。  (神様、このまま、ずーっと手をつないで歩いて行ってもいいですか?)    ようやく達哉は歩き始めた。さっちゃんの手は達哉の手の中に、すっぽりと収まっている。  それなのにきゅっと握りしめても、さっちゃんは握りかえしてくれない。最初と同じように、ふんわりと握っているだけだ。  達哉は自分だけドキドキしているのが悔しくなって、つないでいるさっちゃんの手を持ち上げて、その指先に唇をつけた。  達哉がかがんでさっちゃんをのぞき込むと、さっちゃんがギュッと目をつぶって息を止めていた。  達哉はさっちゃんの手の甲に、もう一回口づけた。  達哉と同じくらい、さっちゃんがドキドキしているのが分かったから。  線路の脇に咲いている小さな青い花が、風に揺れた。
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