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「信じられない!」「オタ芸、やらなくて済むー!」「見たか、大橋!」
二宮先輩はもみくちゃにされた。
達哉はさっちゃんを見ていた。いつでも一瞬でさっちゃんを見つけてしまう。達哉の視線に気付いたさっちゃんが、笑顔をそのまま達哉に向けた。
体育祭の最後に、負けた方はボウズでオタ芸。それが学校中が知っている勝負の約束だ。
大橋先輩は、いつの間に刈ったのか、短めのスポーツ刈りでグランドに出て来た。その後から、オロオロと数人が付いて来ている。負けるつもりがなかったので、陸上部がオタ芸の練習などしていなかったのは、明らかだった。
もともと大橋先輩の暴言から始まった勝負に、付いてきてくれる部員も少なかったのだろう。
グランドのまん中に所在なげに立ち、大橋先輩が謝ってオタ芸をやらずに済ませようとしていた時、スピーカーから大音量でアイドルの歌のイントロが流れ始めた。
コーラス部員が入場門からグランドの中央に走りこんできた。そして大橋先輩達を取り囲むと、二宮先輩を真ん中にして踊り始めた。キレッキレのダンスはピタッと揃って(二宮先輩以外は)、会場の手拍子を誘った。
大橋先輩と陸上部員も、照れ隠しに笑いながら、見よう見まねで、一緒に踊った。
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