優しい隣人

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優しい隣人

 アパートのお隣さんが、朝も早くから小学生くらいの男との子と一緒に、アパートの隣の空き地でラジオを体操をしているのを見かけた。  この近所では早朝ラジオ体操のシステムがあって、小学生は初日にスタンプカードを渡される。  朝、きちんと体操をするとカードに一つスタンプが押され、十日間で体操が終了すると、スタンプを十個集めた子には景品が贈られる。  でもそれは夏休みの初めの行事で、もう九月も終わるこの時期にラジオ体操は行われていない。  だけどあの子はお隣さんと一緒に、早朝から空き地でラジオ体操をするの。  夏の初めに交通事故で亡くなった近所の子。頑張って早起きをし、体操に参加していたけれど。それは八個目で終わってしまった。  その残り二回のスタンプを、幽霊になっても押してもらいたがっているから、お隣さんは協力してあげてるの。  自分で用意したスタンプをカードに押してあげて、今日は、こちらも自前で用意した景品をカードと引き換えに渡してあげた。  おかげで亡くなった子はにこにこ顔で消えていった。  あの人はいつもそう。困っている人がいたら放っておけない、優しい優しいお隣さん。  だから自分の成仏は後回しで、ずっと誰かのために頑張り続けている。  あなたもね、もうこの世のものじゃないんだよ。あの子よりずっと前に死んじゃってるの。でもそれを知っているのか、あるいは気づいてないのか、ずっと誰かのためにお節介を焼いている。  私はその姿が見えるけれど、声をかけてもそれは届いてないようだった。だからこうして見てるだけ。あなたこそ早く成仏できればいいのにねと、死んでも優しいお隣さんを見ている。 優しい隣人…完
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